新入社員の研修の講師をやった。まだ入社して2年経っていない僕が。かなり仕事が出来ないポンコツである僕が講師をやっているんだから会社ってところは不思議だ。話は遡って4月。ちょうど1年前に僕は研修を受ける側で会議室で、入社した方と座って研修を受けていたのだが、どういう経緯か分からないけど去年の秋頃オファーが舞い込んだ。しかも講師側で。
この1年で自分が講師側で話しをすると思ってもいなかった。講師の面々は部長や課長クラスの方で、役職が無い人間で講師をするのは僕だけだった。どうなんって思うよね。研修を受ける人からすると。不思議で仕方ない。当日までの話をすると、資料をPowerPointで作成して、配布用に印刷する。準備はここまで。後は、どう話すかだけだった。
前日、とりあえず何を話すか決めないと、そう思って自宅で脚本を書いた。橋田壽賀子かなってレベルで。どちらかというとクドカンだったかも。夜も遅くなっていた。あきらかな睡眠不足で会社に着いた時、自作の脚本を家に置いてきたのに気づいた。オワタ。研修は午後からだったので、午前中に重要なポイントだけ、配布用のプリントに殴り書きをする。この時点で僕の仕事が完全にストップしている。
研修の10分前。僕はかなり緊張していた。今年は集会室で研修を行うことになっていた。集会室の入口の横で僕は、自分に暗示をかける。僕は今から霜降り明星の粗品だつって。暗示をかける。粗品さん。何故、霜降り明星の粗品だったか分からない。でも、僕が浮かんだのは霜降り明星の粗品だった。僕と粗品さんだったら、天と地ほどの差があるのだが、粗品ばりにトークをする。この段階で研修というベクトルから凄まじく離れているのが分かる。研修の内容は就業規則の説明と昇格や昇給についての話である。
正直言って、新入社員の中でも僕より給与が高い人が居るのは知っていた。かなり無理がある。気が乗らない仕事だ。こんな仕事を押しつけらるのだから困ったもので、正直言って、もうどうにでもなれと思っていた。やっつけ仕事。こんなところで頑張っても僕の評価なんて上がらないし、ミス多いし、給与が上がらないと上司から言われてたし、意味が分からない。
無駄な仕事だけが僕のところの廻ってくるのだ。もうAIを活用した方が良いんじゃないつって思ったよね。こんな仕事要らないじゃんつって。そして、粗品になりきる僕は、しゃべくり倒した。無駄に笑いもとり、熱量も高めに話しをしていく。つまらない内容なのは、僕も承知である。研修中に僕は、もう寝て下さいとか、別に聞かなくても良いですつって、意味が無さげなところは休憩を入れてた。
霜降り明星の粗品風の僕が研修で1時間。なんとか就業規則の説明と人事的な話を終えた時に、虚しくなったのを今でも覚えている。僕は、何をやっているんだろうか。全くの謎の時間と話しを聞いてくれた新入社員の人たち。意味があったんだろうか。