ブルーハーツが鳴り止まない

いつものバーの扉を開くと教養が溢れ出ていた。飛び込んだ席の両隣には教養に満ちた大人たちが居る。顔見知りの方も居れば、初めて会う方も居る。そんな教養溢れた会話に挟まれながら僕は話を聞いて考える。

 

文筆活動をしている女性が僕の左手に座っていた。バーの空間の話の流れの中で全国2位の肩書を持つ女性の文章を見せてもらった。単語ごとは攻撃的で味気の無い単語を繋げて、文節にすると僕にとって不思議な共感性を見せる文章だった。その女性は、「私の文章は鬱になる」とか「暗い」的な事を言われると自虐な発言をしたけど、僕には凄く良い文章に思えた。一言で言えば、愚直の美を感じた。

 

「気が狂いそう。優しい歌が好きで~♪」・「ドブネズミみたいに美しくなりたい♪」

 

数日後とある気怠い午後。仕事は山ほど溜まっているが、思考回路はショート寸前つって。会社内で仕事に集中出来ていない僕。オフィスには先輩や上司が出払っていて一人だった。突然、鳴った電話に全神経が集中した。

 

普段、電話に出ないように注意されている。と言うか僕が電話に出ないようにしてくれている。それは僕が仕事出来なさ過ぎて、電話にも出ることが出来ないからだ。電話の内容は「訪問看護の求人を見たけど、介護士は募集していますか?」と男性からの求人の電話だった。最近、上司から求人の仕事をぶん投げられたタイミング。少しは分かる。僕は、看護師の方は募集してますが、介護士の方は募集しておりませんと丁重にお断りをした。

 

すると。男性は代表に繋いでくれと無理難題を言う。いゃ、代表って社長じゃん。取り次ぐ訳にはいかない。ポンコツの僕でも分かる。そもそも医療施設には人員配置が決まっていて、看護師や保健師。医師等の人数に決まりがあるのだ。その基準を満たさないといけない。介護士はない。その男性が介護士として優秀でも、どうにもならない壁があるのだ。恐らく、看護師と介護士の待遇を見たら、看護師の方が良いに決まっている。無理筋を通そうとする男性介護士と僕は対峙した。

 

「取り次ぐことは出来ません」・「面接は求人担当と担当部署の責任者にて行うので」などなど。介護士男性が折れない。強靭な精神である。

あぁ、気が狂いそう~♪。

 

押し問答の末に、訪問看護の施設なので。訪問介護ではない点を伝えて電話は切れた。

 

文章を見せて頂いた女性と求人に電話をしてくれた男性。ベクトルはすさまじく違うが、この男性からも愚直さを知った。美しさは感じられないけど、きっと写真には写らない美しさがあるのかもしれない。

僕の中でブルーハーツは愚直の美を体現・表現していた人たちだと思っている。